出荷者紹介

小林 康彦 さん

「そのみかんは紅い」

 瀬戸内海に張り出し、高松市と坂出市にまたがる五色台。
その東側の裾野に位置する香西・鬼無地区は香川県で有数のみかんの産地として知られています。

近隣には古墳も点在し、遠い昔から人々が暮らしを営んでいたことが想像されるその土地は、北からは瀬戸内の潮風が届く日当たりのよい柑橘栽培に適した土地でもあります。
そこで親子3代にわたりみかん栽培を家業にされている小林 康彦さんにお話を伺いました

小林さんが就農したのは19年前。みかん栽培農家に生まれ、みかんに囲まれて成長した小林さんにとって、3代目として園地を引き継ぐのは自然の流れだったのかもしれません。

小林さんは就農するタイミングで新しい品種のみかんを導入しました。それが、今や香川県のみかんの代名詞とも言える「小原紅」。
1973年、五色台のふもとの小原さんが営む農園で偶然発見され、それから20年の歳月をかけて検査や栽培試験を行い、1993年に品種登録された歴史を持つ、香川が誇る「紅くて美味いみかん」です。

現在、小林さんは露地とハウスで小原紅を栽培しています。
苗木から育てて3年ほどで結実はしますが、実際に出荷できるレベルの小原紅ができるのは5年目くらいからとのこと。

適度な大きさで(大きすぎるみかんは水っぽくて味が薄い)、お尻が割れてぼこぼこしていて、ちょっと剥きにくいくらいのみかんが美味しいんですよ、とおっしゃっていました。

収穫された小原紅は選果場で外観や糖度などから、検査を行い上から「さぬき紅」「金時紅」「小原紅(レギュラークラス)」とランク付けされます。
もちろん、小林さんは「出荷する全てが最高ランク」になるように1本1本丹念に育てていますが、レギュラークラスでも十分すぎるほど甘く、美味しいです。
これはみかん好きの私が断言します。

また、小林さんには露地栽培とハウス栽培の違いについて伺いました。小林さんによると自然の力を使ってできたみかんが露地のみかん、究極を求めていくのがハウスのみかんだそうです。
『露地栽培では、自然が相手なので思ったようにはいかない。
その中で理想のみかんに近づけていくには、日々の状況を見極めながら繊細な努力を続けることが大切。
ハウス栽培の方は、経費がかかるが理想に近い素晴らしいものができる。
もちろん、一つ一つに手間暇をかけること一緒だが、
究極を求める中で、何に時間をかけ、どう投資していくかを日々試行している。』とのこと。

静かな語り口の小林さんですが、みかんに対する情熱は言葉の端々に感じられました。夏に食べれるハウスのみかん、冬に食べれる露地のみかん。そのどちらも、厳しい基準をクリアして市場に並び、我々のもとにやってきます。

小林さんのような生産者さん達の熱量が小原紅の鮮やかな色づきに作用しているような気がしてなりません。

文 : 松村 純也