出荷者紹介

松本 繁勝 さん

松本繁勝さんは、さぬき市にある鴨庄漁協協同組合に所属しており、冬は牡蠣養殖業を、夏は定置網漁を営んでいます。今回は冬の食材、牡蠣養殖を取材しました。
香川県の牡蠣養殖の歴史は古く、明治時代に研究機関で試験を行っていたという記録もありますが、戦後すぐの昭和23年から志度湾で牡蠣養殖が本格的に始まりました。現在志度湾では32経営体が牡蠣養殖業を営んでおり、鴨庄漁協は一番多い16経営体が所属しています。

                  画像提供:香川県水産課

牡蠣は、春に種牡蠣のついたホタテガイの貝殻を県外(主に広島県)から購入し、ロープに差し込み海中に吊るします。志度湾では、ポールと浮きで組んだ筏(いかだ)式で養殖されており松本さんも筏を使っています。
松本さんは、親が漁師で牡蠣養殖業をしていたこともあり、最初から牡蠣養殖を始めました。もう50年近く営んでいるベテランです。

早朝に港から養殖場に向かうと、たくさんの牡蠣の筏(いかだ)が浮かんでいます。
松本さんの筏に近づくとたくさん牡蠣の付いたロープが、船の上からも見えます。

手際よく5本ほどのロープをクレーンに引っかけて吊り上げます。
「今年はロープ1本でむき身の牡蠣が1kg程度になる。いつもはもっと獲れるんだけど、今年はいつもよりちょっと少ないなぁ」と話してくれました。

数年前に種牡蠣が良くなく不作の年があったのですが、「今年の牡蠣は深い(丸っこい)牡蠣で出来は悪くないのだけど、ロープに付いている数が少ない。小さいときに食害にあったのかなぁ」と推測されていました。

いつもなら25本あげたらカゴにいっぱいですが、量が足りないので30本以上引き上げました。牡蠣を船にあげた後は、ローラーでロープから豪快に牡蠣を外します。

港に帰って、獲ってきた牡蠣をガラガラと洗います。海の中で約1年吊るしていたので、かなりの汚れが付いていました。洗った後は、またカゴに入れて海中へ。

すぐむいて袋詰めしないのは何故か聞いてみたところ、むき身に加工するのは、深夜から朝にかけてだそうです。「牡蠣の身を傷つけずにむくには夜中の方が静かで集中できるから」だそうです。なるほど、ご迷惑をかけないように牡蠣をむく作業は取材自粛です。
かわりに出荷用に準備出来ていた袋詰めの牡蠣を見せてもらいました。

牡蠣養殖業について聞いたところ、「自然を相手にしているので去年と同じなんてことは一度もなかった。海の中までいつも見ることができないので、ロープをあげてみないとその年の出来が分からないから賭けみたいなもの。最初に引きあげたロープに付いている牡蠣の状況で、その年の出来がほぼ決まってくる感じ。その予想より増えることは無いからね。」と語っていました。
志度湾内の牡蠣は漁場が一緒なので業者による差があまりないので、志度産の牡蠣として購入していただきたいです。志度湾では栄養が豊富なおかげで、1年で出荷できる程成長も早く美味しいので私はおすすめします。今年も出荷されているので、志度産の牡蠣を是非召し上がってみてください。

これからの若い漁師へのエールを聞いたこところ「漁師はきついけんなぁ、よほどの覚悟をもってかからんと続けられんなぁ。でも、組合には跡継ぎでなく新規に牡蠣養殖業を始めた人もいるし、息子と近い年の子も底曳網漁を始めたのでこれから頑張ってほしい。」と目を細めて語ってくれました。

また、高松市中央卸売市場のうみまち商店街では、牡蠣焼きを手軽に楽しめるお店があります。事前にご予約のうえ是非お越しください。

うみまち商店街:讃岐網元 あん