出荷者紹介

嶋野 文太 さん

美肌のハマチ、オリーブハマチ

源平合戦の舞台にもなった庵治の海で、オリーブハマチを育てる嶋野 文太さん。
誰しもが「兄貴!」と呼んでしまいたくなるような頼もしく勇壮な風貌とはうらはらに、独自に編み出したオリーブハマチの養殖技法は長年積み重ねてきたデータを基にした緻密で繊細なものでした。

庵治の港から小型の漁船で10分ほど沖にでたところに、嶋野さんが所有するオリーブハマチの生簀が4台があります。
現在、嶋野さんはこの他にも生簀を持ち合計20台もの生簀を使い庵治の海でオリーブハマチを養殖しています。

ところで皆さんご存知のオリーブハマチ、その名称から「オリーブを餌に使っている」ということは想像できるでしょうがオリーブのどの部分を、どのくらいの頻度で餌に混ぜているかご存知でしょうか。

オリーブハマチの養殖に使用されるのはオリーブの葉の部分。
オリーブの葉には強い抗酸化作用を持つ「オレウロペイン」というポリフェノールの1種が多く含まれており、コレステロールの酸化防止のほか、抗菌、美肌に大きな効果があると言われています。
スーパーや鮮魚店で見かけるオリーブハマチが美肌で美しいのはオレウロペインのおかげかもしれませんね。

また、オリーブハマチの養殖において、100日から150日の餌やり期間のうち餌にオリーブを混ぜ込むのは出荷前の15日間ほど。
想像していたよりも短いなぁ、と思うかもしれませんが長年の研究と経験から、15日間だけオリーブの葉を混ぜ込むのがベストだと確信したそうです。

そして、裏を返せばオリーブハマチの養殖で本当に大切なのは5月からスタートする毎日の餌やり。

嶋野さんの言葉を借りれば「毎日、海と魚を見て餌の量やあげ方を調整する。その毎日の試行錯誤の継続で生簀のハマチを100%の状態にもっていき、出荷前の期間にオリーブの葉を混ぜた餌を与えて120%に仕上げる」とのこと。
生簀に魚を入れてから、オリーブハマチとして育て上げ、出荷し生簀が空になるまで一日たりとも気を抜くことはなく庵治の海と向き合っています。

また、船内に多種ストックしているサングラスも、「その日の海の様子ごとでサングラスを変えて、餌の喰い付きや波の様子をいち早く知る」のが目的で、決してオシャレのためじゃないよと豪快に笑う嶋野さん。

繊細で、でも面白くて気っ風がよくて、こちらもつられ笑いしてしまいました。

そんな嶋野さんに美味しいオリーブハマチの見分け方を聞きました。
キラキラ輝いているのが美味しいオリーブハマチ、とのことですが、ポイントは「切り身の場合はスーパーなどのショーケースや店内の照明から外して、それでも輝いているか確かめること」だそうです。


なるほど。灯りの反射ではなく、自ら虹色に輝く透き通ったオリーブハマチを選びましょう。

おすすめの食べ方は「お好きなように」とのこと。
確かに新鮮なオリーブハマチはどう調理しても美味しく食べれますからね。

最後に「海との付き合い方」について尋ねました。
大きな恵みをもたらしてくれる瀬戸内海を「借してもらって」養殖をしているという嶋野さんは日々どれだけ餌の食べ残しをどれだけ少なくすることができるか、細心の注意を払って餌やりをしています。
餌の食べ残しは海の汚れに繋がるため、生簀の魚にとって最適な餌の量や上げ方を毎日毎日考えているとのこと。

その日々の努力と、瀬戸内海の自浄作用のおかげで美しく豊かな庵治の海が保たれているのだと感じました。

文 : 松村 純也