出荷者紹介

谷川 武 さん

「青虫も元気なブロッコリー畑」


高松市の南東部に位置する十川地区。
近年は市内へのアクセスと環境の良さから分譲住宅や商業施設が増えつつありますが、肥沃な土壌を利用して昔から野菜づくりや稲作が盛んに行われています。
とりわけ、十川地区はブロッコリーの生産が盛んな地区。
そこで専業農家としてブロッコリーの生産に携わる谷川 武さんにお話を伺いました。

昔ながらの家並みと、新興住宅地や商業施設との間を田園や農地が縫うようにがつながっている十川地区。谷川さんはここで稲作や麦作のほか、ブロッコリーなどの園芸作物を栽培しています。
もともとは兼業農家だった谷川さん、6年前に一念発起して専業農家へと転身しました。

現在でも、近隣の耕作放棄地などを手に入れつつ農地を増やしています。
谷川さんの農地を訪ねたのは11月初旬。新米の出荷が終わり、いよいよブロッコリーの収穫に本腰を入れ始める頃でした。晩秋の陽光をいっぱいに受けた畑では、収穫前のブロッコリーがきれいに並んでいました。

「これはもう少し、これはしばらくかかるなぁ」とブロッコリーの葉っぱを少し広げながら谷川さんは教えてくださいました。つまり、ブロッコリーの収穫は畑ごとに一気に刈り取るのではなく、一株一株の生育を目で確かめて「今日採ろう」「これは明日採ろう」と判断するとのこと。

もちろん、収穫は全て手作業です。
また、香川県産のブロッコリーで市場に流通するものは全てが「朝採り」。
霜が降り始める前までは朝7時くらいから、霜が降りるくらい寒くなってきたら朝日で霜が乾いた後の朝9時くらいから収穫が始まります。

その新鮮さと美味しさは、関東などのデパ地下やスーパーマーケットの青果コーナー担当者も認めるところだそう。
そんな話を聞くと、香川県民として嬉しくなります。
ブロッコリーの生育期間は苗で植えてから3ヶ月間ほど。
今年、谷川さんは「おはよう」「SK」「クリア」という3品種のブロッコリーを育てています。それぞれ生育期間と形(前2つはドーム型、クリアはきのこ型)が異なり、個性も少しづつ違うとのこと。

ただ、谷川さんが管理するブロッコリー畑全てで共通することがあり、それは葉っぱがどれも虫食いになっていること。
それはつまり農薬の使用量を抑えているということです。虫食いで穴だらけのブロッコリーの葉や、葉の上に見つけた青虫をカメラで撮ろうとすると「こんなん撮るの?恥ずかしなぁ」と苦笑いをする谷川さん。
実直で信頼できる農家さんです。
ブロッコリーは新聞紙に包み、軸の部分は湿るようにして冷蔵庫に入れれば長い期間保存できると教えてくださいました。

またブロッコリーの美味しい食べ方を伺うとしばらく思案して「うーん、やっぱボイルして食べるんが一番美味いんとちゃうか?」とのこと。
はい、間違いないです。でも何かちょっと変わった感じで、おすすめはないですかねと食い下がると「あー、きんぴら。ブロッコリーのきんぴらは美味いよ」と教えてくださいました。
それすごく美味しそうです。みなさんもぜひお試しくださいね。汎用性が高く(私の冬のお弁当にはほぼ毎日入ってます)、油との相性もよく、熱を加えると柔らかく優しい味わいになるブロッコリーは冬の万能野菜。

畑にしゃがみ込み、思案しながら収穫する農家さんの姿を想像しながらいただくと、その美味しさも格別です。

文 : 松村 純也